(ソラ)に手を

 







なんとはなしに目をやった自分の影から目が離せなくなって、地面を見ながら歩く。
ひょろりと細長い影。うっすらと曇っているためか、影自体が発光しているかのように淡くぼんやりとしている。ざくざくという音にあわせてふわりふわりと上下に揺れるその様子が、どこか楽しげにも、人を小バカにしているようにも見えた。

自分の逆立った髪の毛の影が地面のでこぼこをすべっていくのを見るのにもすぐ飽きて、今度は空を見上げる。遮るもののほとんどない視界には真っ白な空が広がっていた。何度も何度も刷毛で薄く刷いたような、絹糸のような質感を見せる一面の雲。シルクのヴェール越しのような太陽の光は淡く、夜の星の色に似ていた。
その光にふさわしく、空気は冷たく澄んでいる。その透明な空気に包まれているのだと思うと、体が小さく、何かに怯えたかのように震えた。

例年より遅い初雪が降ってから、寒さは急激に厳しくなった。寒さは毛穴からじわじわと浸透していき、薄い皮膚の中の筋肉や内臓を凍えさせる。骨にも直接冷気がまとわりついて、体の芯が軋む。

 

「雪、降るのかねぇ」

「なー、カカシ先生!雪降ったら温泉に泊まる!?」

誰に聞かせるでもなく呟いた言葉に対して思いがけず返ってきた答えに、カカシはわずかに肩を落とした。もうすっかりお泊り気分でいるナルトの笑顔を横目で見る。
「・・・お前はー。どうしてそうなるんだ」
経費削減って、オレが怒られるんだぞ〜。
もちろん、雪が降ろうと何しようと、日帰りだ。だったら降らない方が楽でいい――。

・・・雪。悪天候を利用しての任務は忍者、特に暗部の鉄則だった。雨や雪が姿を隠してくれるし、そこにいたという痕跡も消してくれるからだ。わざわざ何日も嵐が来るのをじっと待ってから、やっと動くこともあるほどだ。
一方、迫ってくる敵の気配や逃げる敵の痕跡を同じように雪が消してしまい、苦い思いをすることももちろんある。
――それらは自分にとって何年も前の話ではないのに、まるで遠い昔の記憶のようだった。
今は雨が降れば雨漏りの修繕、雪が降れば屋根の雪下ろし・道路の雪かきが自分たちを待っている。
やっていることはあのころとは全然違うというのに、しかし、雪が降るとなるとやっぱりなんともいえない焦燥感にかられるのが、不思議といえば不思議だった。

カカシのそんな気持ちなど知らぬげに、子どもたちはたったっと足音も軽そうにどんどん前を歩いていく。

転ぶなよー・・・。

胸の中で声をかけてから、また足元に目線を移した。
一瞬何かを思い出しかけたが、結局わからず、曖昧な気分になる。

――年をとったのかねぇ。

そんな言葉を胸の中で呟くと、とりあえずは何にだか、納得したような気持ちになった。

 

+++

 

山の中の小さな集落での任務を終え、帰るころには空の一部は暗く、いかにも降り出しそうな様相を示していた。
帰り道で短い休憩を取り、水筒に口をつけながら空を見上げると、白い雲の下を黒い影のような雲がすごい速さで流れていく。

「そろそろ降るかもな〜」

そう言って立ち上がると、子どもたちも一緒に立ち上がる。・・・が、サスケだけが立ち上がらない。地面に座ってうつむいたままだ。
「おーい、もう行くぞー」
そう声をかけたが動く気配がなく、かけよったサクラが声をかけながらおずおずと肩に手をやった。――サスケは寝起きが悪いらしく、同じように居眠りをしているのを起こそうとしてくないをつきつけられたことがある・・・。寝起きが悪いとかそういう問題じゃないような気はするが・・・、ともかく今回は大丈夫だったらしい。どうやら目を覚ましたらしいサスケがもそもそと立ち上がろうとしているところに近寄る。
「夕べいつまでも起きてたんじゃないのか」 その言葉は発せられる前に口の中で消えた。サスケがふらりとよろめいて、そのまま前のめりに倒れていったからだ。
「サスケくん!?」
驚いて声をあげたのはサクラだが、受け止めたのはカカシだった。受け止めて――、カカシは指先に一瞬触れたサスケの頬の熱さに驚いた。
両腕を支えられたサスケが何かをぼそぼそと呟いているが、よく聞き取れない。かがんで口元に耳を近づけると、サスケはそれから逃げるように熱い手のひらでカカシの腕を押しやった。そしてかすれた息で大丈夫だと吐き出した。
――どこが大丈夫だと言うのだろう、立っているのもつらそうなくせに。

カカシは少し乱暴にも見える手つきで、サスケの冬支度をしているとはいえ薄着な体を、自分の厚めのオーバーにくるんだ。サスケはうつむいてされるままになっている。抵抗がないのをいいことにさっさと重い体を背負うと、肩にぐったりと頭が預けられてきた。そのぱさついた髪ごしに、すぐに熱が首筋に伝わってくる。息も、同じように熱い。

これだけ熱があれば相当調子が悪かったはずなのに、どうして動けなくなるまで放っておくのだろう。サスケらしいといえばサスケらしいのかもしれないが、そんなことを言って笑っている余裕は今はない。サスケのこういうところは直させなくては。・・・言って聞くとは思えないが。
どうしたものかねえ、とこっそりため息をついて、さてなんと言って言うことを聞かせようかと考え始めたが長くは続かず、どこか曖昧な気分だけが残った。とにかく里に早く帰ろうと、自然と足が速くなる。

足元には、もう自分の影はなかった。
ざく、ざく・・・。
自分が地面を踏む音だけがやけにうるさく聞こえてきて、少し足音を抑えて歩く。

そういえばオーバーをサスケに貸してしまったので、寒い。よく見ると息も白い。
どうしてこんな思いを、と、寒さに震えながら歩いているうちに、だんだんと背中が温まってきた。湯たんぽを背負ってるみたいだな、と思って、その背中のサスケの重さにほっと息をついた。体の一部分でも温められてるだけで気分がだいぶ違ってくる。

ふと視線を感じて隣を見ると、ナルトがぽかんと口を開けて肩先を一生懸命見上げてきていた。顔の半分以上をオーバーで覆われたサスケを見ているらしい。上を向くと口が開いてしまうところが、どうにも子どもらしくておかしい。ナルトはそんな視線に気づいたのか、目が合うと少し決まり悪そうにフンと横を向いた。
また視線を感じて反対側を見ると、サクラが、少し後ろをついてきながら、これも口を開けて背中を見上げていた。女の子が口なんか開けてちゃ・・・。その視線に気づいたのか、サクラがキッと眉を吊り上げて、びしっと前を指差した。前を見て歩けと、そういうことだろう。
やれやれ。
その指示どおりに視線を前に戻しながら、裸の木々の枝の重なりをぼんやりと眺める。サスケと自分の荷物をそれぞれ持ったサクラとナルトが、サスケを気遣うように自分の背後を見上げるのは、なんだかくすぐったかった。それからいくらも経たないうちに、今度は隣からと後ろからといっぺんに視線を感じて、カカシはマスクの下で小さく吹き出した。

こうして熱のあるサスケを背負って、ナルトとサクラのいつもよりいくぶんトーンを落とした他愛もない話を聞いていると、どこか懐かしいような気持ちになる。
・・・そういえば自分にもこんなころがあったのだろうか。
それは暗部のころよりもさらに遠い記憶で、断片的には思い出せても、実感として思い出すのは不可能だった。なんだか他人の記憶のようだ。それは別に悲しいことではなかったが、時間は流れていくのだという厳然たる事実を目の前に突きつけられたようで・・・。どうあったって戻ることはできないのだ。・・・戻りたいと思っているわけではないが。
カカシはこんなことを考えた自分を少しいぶかしんで、天気のせいかなと、また空を見上げた。

 

「・・・ぅ」

しばらく歩いた後、サスケが背中で小さくうめいた。その苦しそうな息に、代わってやれればなどと思って、すぐにその自分の考えにやられてるなあと苦笑いをする。
子どもたちを引き受ける前にはあんなに面倒だと感じていたのに、自分のこのお母さんぶりはなんなんだろう。最初に予想していたとおり、確かに大変なこともあるけれど、でもそれも思っていたより悪くなかった。

サスケの無防備な重み。微かな吐息。伝わってくる熱。
なんだか切なくて、体のあちこちが痛んで泣き出したいような気持ちになる。

熱があることを隠していたことについてはやっぱり小言を言いたい気持ちになるけれど、それだって、悪い気分じゃなかった。これなら全部、噛まずに丸呑みしたっていい。

・・・オレって、なんて単純なんだ・・・。

 

「雪降るぞ〜」

子どもたちを少し急かすようにそう言う。
気にかかるのは天気のことよりもサスケの具合だったが、その心を見透かしたかのようにそれからまもなく雪が降ってきた。

最初は、鳥の羽根かほこりが落ちてきたのかと思った。
少しの間に降ってくる雪の粒は数と大きさとを増して、その中のいくつかがわずかに表れた顔の上で解ける。本格的な降りになりそうだったが、思うように急いで進めない今日くらいは、せめて里につくまで待って欲しかった。
鼻には、雪が地面に落ちて舞い上がらせた土の乾いたにおいが、微かに届いてくる。

ふと、肩先で息を飲むような気配がした。わずかの間をおいて届いた小さなため息の音に、鼓膜が優しく震わせられる。サスケが目を覚ましたのだろうか。今のこの状況を、やっぱり嫌がるだろうか。その動きの続きを待つように意識が背中に集中する。
だがそのわりにサスケが動く様子はなく、同じようにぐったりと体を預けてきている。眠ってはいないけれど、起きてもいない、そんな感じだ。もう一眠りしてくれればその間に里に着く。

ゴメンネ、降り出す前に帰りたかったんだけど・・・。

 

「あー、降ってきちゃったなー」

言い訳のように呟いた独り言を聞きつけて、ナルトが今度はこちらを見て重くないかと聞いてくる。
代わってくれるつもりなのだろう。気持ちは嬉しいけれどその必要はなかった。重くないことはないが、これくらいなら全然平気だし、これは自分の役目であるような気がした。たまには大人らしいことしないと・・・。
それに、自分の意向に関係なくそんなことになったら、きっとサスケが恨む。知らないうちにナルトの世話になるよりは、まだこっちの方が我慢できるだろう。
「あったかいから平気」
直接答えるのはちょっとどうかと思って曖昧に答えるが、これもウソではない。実際、温かいのだから。
ナルトはふぅんとサスケを見ると、こちらを見てにかっと笑った。つられて笑ってしまってからやっぱり少し浮かれてるかなと反省した。

視線を前に戻してすぐ、サスケの体がビクンとこわばった。なんとなく息を潜めているようなその気配と、手に伝わる感触から、目が覚めたみたいだなと考える。もう一度眠るかと思っていたら、その前に意識がはっきりしてしまったようだ。今まで歩くのに合わせてぐったりと揺られていた体が、どこか固く振動に逆らっている。

・・・どうしよう。
悪いことをしているわけじゃないけれど、少し、悪かったかなという気がしてくる。
いや、感謝されたいわけではないけれど、普通だったら感謝されてもいいことをしているのだ。だいたい、熱を出すサスケが悪い。歩けないって言うから背中を貸してやってるんだぞ〜。

ひとり言を、なぜか気合を入れて心の中で言ってから、でも降りたかったら降りてもいいけど・・・と、心持ち気弱に考える。
――でも、やはりサスケには今歩いて帰るだけの体力はない、と思う。自分で歩いて帰る余裕があるのなら、その体力は熱を下げるために使って欲しい。サスケの体調管理はサスケの責任だが、こちらにも責任がないわけではないのだ。たまにはいうことを聞いてもらおう。
それにサスケだって、・・・こんなときくらい甘えればいいのに。だいたい・・・、

理論武装をしている間に、サスケがやっぱりもぞもぞと動き出した。でも、降ろさない。動いて位置が微妙にずれたサスケを、またきちんと背負いなおす。
それを疲れたのだと思ったのだろう、サクラも、疲れたら言ってとナルトと同じように見上げてくる。にっこり笑ってうなずくと、サクラも軽く笑って、さっきよりも声をひそめてサスケの心配をはじめた。本人に聞かれないと思っているからか、ナルトまでが、明日の任務にサスケは来るのかなどと言ってくる。
2人とも優しいね。
そう言って褒めてあげたいけれど、サスケが聞いてると思うとやりにくい。
サスケがそういえば昼食をあまり食べていなかったとか、依頼人の顔を見てぼーっとしていたけれどあれは変な顔だから驚いていたわけじゃなかったのかもとか、髪の毛に元気がなかったとか、よくそんなところまで見ていたというようなことを、話している。サスケの分まで元気に。時々こちらに同意を求めてくるが、答えはやはり曖昧になる。
でもサスケにこの2人の話を聞かせたい気持ちもある。こんなに心配しているんだよって、サスケはもう少し知ってもいい。・・・心配されて喜ぶようなやつじゃないけれど。・・・心配をかえってなめられてるとか、そう誤解する可能性もあるけれど・・・。それに、心配されるような状況になったことで自分を責めることも考えられるけれど・・・。
・・・・・・。

背中のサスケのこわばりはまだ解けていない。やっぱり気分を悪くさせたかとサスケの気配に意識を集中させると、息まで止めているようだった。
・・・何をそんなに警戒しているのだろう。具合が悪いのに体を休めることに専念できない、その様子がなんだかとても痛々しくて、かわいそうになってしまう。病気の時までそんなに気を張っていたら、治るものも治らない、・・・こともないけれど、とにかく安心させたいと思った。
・・・これはこちら側のエゴなんだろうか。病気のときくらい、とりあえずはいろいろなことは置いておいて、身を任せて欲しいと思うのは、いけないことだろうか。・・・なんだか自分まで熱が出そうだ。普段ものを考えない人間が考えすぎたっていいことはない。
そんなことを思いながら、サスケの体をなだめるようにたたく。
「大丈夫だよ」
サスケにも聞こえないくらい小さな声で言うと、サスケがそれに答えるように頭を押し当ててきた。伝えたいことが通じたのかどうかはわからない。ただ、サスケのその行動に、胸がなんだかきゅうと痛む。野の動物が手から直接餌を食べたときに感じるような痛さだ。

少ししんみりと、でもどこかで幸福を感じているような気分で、しばらく自分の足音を聞く。

 

「・・・っ」

背中からサスケの声が聞こえたような気がした。耳を澄ますと、少し呼吸がおかしい。熱が上がって状態が悪くなったのかと一瞬ひやりとする。ちゃんと様子を見るべきかと立ち止まろうとして、ふいに、泣いているのだと気づいた。
サスケが、・・・泣くなんて。

・・・何で泣くの。何が嫌なの。

オレがいけないの?そんなに、おぶわれるのは嫌だった?
だって、熱を出すから。ちゃんと歩けないみたいだったから。心配だったから。・・・そうしたかったから。

・・・声を殺して泣くその様子に、なんだか、こちらまで泣けてきそうになる。

オレのことが嫌なのでも、サスケ自身のことがが嫌なのでも、その他の何かが嫌なのでも、とにかく泣くほど気に障ることがあるのはわかったから、そんなふうに泣かないで。理由は何だってあとでゆっくり聞くから、言いたくなかったら言わなくたっていいし、気が済むなら一発くらい殴ってもいいから、とにかく・・・。

泣かないで。

サスケが何を考えているのかはわからないけれど、嗚咽を噛み殺している様子が肩越しに生々しく伝わってきて、切なくてしょうがない。このまま何事もないように歩くのは、サスケはどうでも、こちらが耐えられそうになかった。

こっそりため息をついて立ち止まると、ナルトとサクラが同じように立ち止まって振り返る。
「オレはちょっと休憩〜。先行ってて」
サクラが親切に代わると言ってくれるが、笑顔を作って断る。サスケはそのサクラの申し出に反応して背中に張りついてきた。このサスケの行動はわかりやすくて、少し嬉しかった。しかし、そんな意思表示をしなくてもサクラに背負わせたりすることはないのに、と思うと、一瞬前に嬉しく思ったのと同じくらい、少し悲しくなった。収支は合っている。そう思うと、さらに複雑な気持ちになった。
それが表情に出たのか、ほんとに大丈夫なのかとナルトとサクラが心配そうに聞いてくる。それには簡単に大丈夫だと答え、とにかく、すぐに追いつくからと歩かせて、その後姿を見送る。2人の足音が遠ざかるのを聞くと、サスケがほっとしたように涙に濡れた息を吐いた。

「サスケ、お前はね・・・、」
そのため息につられて、サスケに話しかける。サスケの気持ちを逆撫でしないようにと考えすぎてしまったせいか、不自然にのっぺりした声が出た。しかも、別に言いたいことがあったわけではないのでその後の言葉が続かない。
言いたいことがないわけではないが、それは今言わなくてもよかった。それよりも、今はサスケに泣きやんで欲しかった。
「あのね・・・、」
何を言ったら泣きやんでくれるのかと考えるが、何も出てこない。いざ必要なときになってみると何も思いつかないのが恨めしい。
黙っていても構わないのだろうが、2人きりになってしまうと沈黙が妙にそわそわと感じられる。少し慌てて、ただ泣いているのを聞いているのも変かと、とりあえず思いついたことを話しかける。そういえば、熱はいつからあったのだろう。
「・・・熱はいつからあった?」
「・・・」
・・・思ったとおり、サスケの答えはない。
とりあえず友好的な態度を示そうといろいろと言ってみるが、どれも不発だった。別に答えを求めていたわけではないからいいのだが、ちょっと自分がバカみたいだった。まあ、子守り歌代わりにでもしてもらえれば・・・。

そんなことを思いながら一方的な会話をしていると、急にサスケの気が膨れ上がった。それはすぐに小さくなったが、一瞬ではあるが殺意さえ感じられた。

・・・どうやら失敗したようだ。

 

しかし、気づくとサスケは泣きやんでいた。そのことに自分で思っていたよりも安心して、ほっと息をつく。そしてこわばっていたサスケの体もいつのまにか力が抜けて、ぐったりと体重を預けてきていた。
単純なことに、それだけのことで胸が温まって、自分でも不思議なくらい優しい気持ちになる。オレもいいかげん仕方ないなあ。

「よいしょっと」
わざわざ掛け声を出して、サスケが体重をかけやすいように体の位置を直す。
ついでに嫌がられるかと思いながらも頭を撫でると、サスケは少し驚いたようだった。でも特に嫌がっているようでもない。もう少し眠るように言うと、サスケは何かを考えている様子でじっとしている。動けなかっただけかもしれないが、こういうときに普段張り巡らされているバリアのような気は、少なくとも感じられなかった。
首をひねってサスケの方を向くと、肩に預けてくる頭と散らばった前髪が見えた。白い雪が、サスケの髪に舞い落ちては解けていく。こんなに頭を濡らしたら余計熱が下がらない。雪なんかやめばいいのにと思いながら、サスケの髪についてまだ解けずにいる雪をそっと払う。
雪が解けて湿った髪を通して、サスケの頭の熱が空気ごしに頬に微かに伝わってくる。熱と一緒に、濡れた髪の匂いも届く。

「ナルトたちが待ってるんじゃないのか」

ふいにサスケに話しかけられて、自分がぼーっとしていたことに気づいた。そうだ、ナルトとサクラを先に行かせたのだ。前を向くと、くねった道の先はだんだん激しくなる雪に塗り込められて、道も、山の斜面も、空も、見分けがつかなくなりそうだった。かろうじて周りを取り囲む木々の黒い枝だけが、行く方向を指し示してくれている。
まっすぐ落ちてきていると思った雪は、歩き始めてみると、こちらに向かって降ってくるようだった。ぱさぱさと音を立てて顔や頭に当たっては解ける。
前を歩いているはずのサクラとナルトの姿は、緩やかに蛇行する山道に隠されているのか、見つけることができない。白い視界は、片方だけ出ている右目を少しだけ痛ませる。聞こえてくるのは雪が降り積もる音だけ。柔らかい雪の上を歩いているせいか地面を踏みしめているはずの足の感覚も少し頼りなく、サスケを背負っている背中の温度と支える腕のわずかな疲労感だけが、現実味を伴って感じられる。

一瞬、白い雪の壁に閉じ込められて、この世界にはサスケと自分の2人しかいないような錯覚を起こした。自分がどこに向かって歩いているのかも、その瞬間忘れた。

そして、このまま降りつづける雪に閉じ込められてもいいと、一瞬本気で思った。

 

・・・なんだそれ。

自分まで熱が出てきたのかと思いながら、今の状況にのろのろと意識を引き戻す。
何はともあれ、サスケを早く寝かさなくてはならなかった。何かを食べさせて、薬も飲まさなければならない。その前に、薬があるのかどうか確かめて、・・・その前に部屋も暖めなくてはならないし、・・・今日の任務の報告書も出さなきゃいけないし・・・、それから・・・。
今日はまだ、やらなくてはいけないことがたくさんある。それら1つ1つを頭に思い浮かべては順番に並べて、ひととおり出揃うと、カカシははぁとため息をついた。

・・・明日の任務は、絶対雪かき三昧だな。

・・・サスケがいないと、ちょっときついかも・・・。

カカシはもう一度ため息をつくと、とりあえずは、ずいぶん先に行ってしまったらしいナルトとサクラを追って、少し急ぎ足で歩き始めた。

 

 

 

END

2001/03/02
ブラン*

狽ネ、長・・・!!ごめんなさい!!あう・・・。
ええと、これは、10000HITでいただいた「雪と任務(概要)」というリクで書いた駄文のフォローのカカシ視点版です。でも全然フォローになっていません。また無駄を増やしてしまいました。エコロジーの精神に反してる・・・。
けっこう前にほとんど書いてしまってあったのですが、手直ししてからUPしようといじっているうちに、やっぱり何が書きたかったのかわからなくなってしまいました。だらだらと長いだけで。それにカカシが・・・、偽者・・・。(そんなのばっかり・・・) 季節をはずしたのもかっこ悪すぎです・・・。がくり。

そのキリリク駄文です。(↓) なんでこうも噛みあわないのでしょう・・・。これとふたつ合わせてお読みいただくと、さらにわかりにくいことになります。・・・すみません。(泣)

>>>レースの森にて

 

 

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